空中散布の影響

空中散布

空中散布は町に農薬を撒くのと同じ―噴霧のガスは町に漂う

以前から松枯れ防止で、有人ヘリによる農薬散布が行われてきました。それに加え、近年ではラジコンヘリを使った水田への農薬散布が普通になっています。
 ラジコンヘリにより散布を請け負う専門会社があり、農協や地域の農家の依頼を受けています。
 市町村によっては、散布時期等を知らせていますが、何の告知もないばかりか、市民が問い合わせても満足な回答がえられないという市町村も多いのです。
 農水省は「無人ヘリコプター利用指針」を作成し、風の強い日に撒かないことや、住宅に飛散しないよう注意することなどを記載していますが、これは法令ではなく強制力を持ちません。散布計画の提出の義務もありません。
 しかし、空散の本当の問題は、松林や田畑に農薬をまいても、農薬の一定部分はガスとなって飛散することです。散布場所から4km離れた地点でも、草むらの虫が死ぬ強さがあります。農水省は養蜂家に巣箱を待避させるなどの指導をしています。そんなことよりも、母親に赤ん坊を待避させよといわなければならないのです。
 EUでは2006年に農薬の空中散布を禁止しています。

空中散布は地上散布の200倍の高濃度

 無人ヘリでの農薬散布は地上散布よりも濃度の高い農薬が使われます。ラジコンの積載可能重量が限られているからでしょう。次のようになっています。
  地上防除    1000倍希釈
  有人ヘリ    12~15倍希釈
  無人ヘリ    3~8倍希釈
ラジコンヘリの希釈を5倍とすると地上防除に比べて200倍の高濃度の農薬が使われることになります。
 散布された農薬は、高濃度の霧状になり2~3週間、空気中に漂います。「喉が痛い、咳や鼻水が出る」など風邪だと思っている人の中にも、実際は農薬にやられているというケースがあります。
 特に、化学物質に敏感な体質(化学物質敏感症)の人の中には、2キロくらい離れた処に住んでいても呼吸困難で倒れたりするケースがあります。散布時期を知ることもできず、あらかじめ避難することもできません。

肺からの農薬吸引は影響が大きい

 人間が口から摂取する物質は、食物・飲み物を合わせ、1日平均約2kgです。これに対し、吸い込む空気は、1日約10kgです。空気の方が5倍多いのです。
 食物・飲み物は、解毒作用を受けますが、空気に含まれる物質は、肺から直接血液に入ります。だから呼吸器系の毒性は、消化器系の毒性よりはるかに低濃度でも悪影響を及ぼします。
 悪いことにネオニコチノイド系農薬のガスは、無味無臭で、それを吸っているという意識がありません。頭痛や倦怠感などの症状が出ても、農薬が原因ときづきにくいのです。いつのまにか農薬を吸い込み、胎児に影響が出たり、長期的に神経性の病気になることがあります。

生態系への影響が大きい

 ネオニコチノイド系農薬アドマイヤーの蜜蜂半数致死量は0.0179μg以下です。これは県など公共検査機関の薬物検査では検出できない量だといいます。超微量で昆虫を殺すのです。
 これまでの有機リン系農薬では、毒性は数百メートルに拡散するだけでした。それに比べ、ネオニコチノイドの殺傷力は半径4kmの範囲に及びます。農村では散布地点の田畑を中心とする半径4kmの円が無数に重なった状態になっています。
 農村地帯では、最近網戸が不要になったという声を聞きます。以前は、夏、電灯に向かって虫が飛んできていたのに、最近は虫が1匹も虫が来なくなったというのです。虫がいなくなれば、鳥もいなくなります。農村の生態系が今破壊されつつあります。

土壌残留率と水系汚染

イミダクロプリドの半分以上が土壌中に1年以上残留することがわかっています。同じ土壌で何回もネオニコチノイドを使用すると残留値がさらに高まります。
 また日本の食品安全委員会(2007)の報告では、水田状態の土壌での半減期は1~70日、畑地状態では70~90日(容器内試験では195~218日)でした。だから、稲も野菜も土壌からイミダクロプリオを吸収し続けており、当然収穫時の米や野菜にも含有されます。
 水質汚染も懸念されています。2008年の調査で、河川水の78.8%、水道原水の32.7%からすでにイミダクロプリドが検出されています。
 過去に新潟県白根地区で胆嚢癌が多発しましたが、この原因は水道原水の農薬でした。今、水道原水に農薬が増えつつある状況が懸念されます。